赤ずきんは狼と恋に落ちる
ガチャッ、と大きな音と、いつもより激しく揺れるベルの音。
息を切らし、肩で呼吸を整える。
「お姉ちゃん……!」
ポロポロと涙を零しながら、立ち上がるちほ。
「ちほ……、ここに居たの……」
安心して、その場に座り込んでしまう。
ここなら安全だし、ちゃんと見つけられた。
「良かった……」
大きな息を一つ落とし、ホッとする。
そうだ、千景さんにお礼を言わなきゃ……。
「ごめんね!!」
立ち上がろうとした直後、私は駆け寄ってきたちほに、抱きしめられた。
「ごめんね!ごめんねお姉ちゃん!!」
突進するかのように駆け寄られ、抱きしめられ。
思考が追いつかない。
「え……ちほ?」
私、そんなに怒ってないよ。
その一言も言えずに、ただ、ちほの肩を優しく叩く。
電話で聞いた、ちほの声。
ちほが思っていること。
ちゃんと、ちゃんと聞けて、良かった。