赤ずきんは狼と恋に落ちる



「お姉ちゃん、優しくしてもらってね!」

「え?!そんな……」



話は分からないから、適当に相槌を打ってしまった。

優しくしてもらう?



「ちほ、それって誰に…」

「宇佐城さんに決まってるでしょ?」



「何を言っているんだ」とでも言わんばかりに、ちほは不満そうな顔をする。





もう十分優しくしてもらっているのに。

これ以上してもらうなんて、そんな贅沢な事は出来ない。



ちほにこれ以上言わせないように、制止をかけようとしたその時。




「っはは、やっぱり分かりますか」





さっきよりももっと困った表情で笑う千景さんと、




「一目見ただけで分かりますよ。でも、嫌がるような事をしたら、許しませんから」



と、得意げに笑っているちほの姿。





何の話をしているんだろう……?








「じゃあ、また来ますね」


最後に千景さんにそれだけ言うと、また私のところへと戻ってくる。



「何の話してたの?」

「んー?秘密」




口角を上げ、ニヤッと笑うと、ちほは私の手を握ってくる。



「宇佐城さん、また来ますね!
今日はありがとうございました!」



そう言って、私の手を引っ張りながら、挨拶をする。



「千景さん!」


このままだと、引っ張られたまま家に着きそうだから。



「あの、ちゃんと、戻って来てくださいね!」




半ば強引に、「家に帰ってこい」と言うと、



「明日には戻るから」



と言い、にっこりと笑い返してくれる。



それだけで、私はもう、十分なのだ。



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