赤ずきんは狼と恋に落ちる
我慢できなくなった狼
「なぁ、りこさん。今からどっか行かへん?」
「今からですか?」
***
ちほが実家へ帰って、2週間が過ぎた。
あの後、千景さんは大きなバッグを持って、「ただいま」と言ってくれた。
また一緒に過ごせる。
それだけで、十分だったのに。
帰って来てくれただけで、私はまた、千景さんともっともっと、近付きたくなる。
私が近い存在になるなんて、夢みたいなことは、ある訳がない。
だけど、今は「おはよう」とか、「行ってきます」とか、ごくごく有り触れた日常が、愛おしくなっている。
贅沢だなぁ、私。
***
窓の外を見ると、今日は久しぶりに晴れていて、天気が良い。
暖かくなりそうだ。
「天気も良いし、久しぶりにどこか行きたいです」
最近、千景さんとどこにも行っていない。
せっかくのお誘い、断る理由なんてない!
「よし、なら決まりな。11時くらいから出かけよっか。りこさんは、ゆっくり朝ごはん食べとってええから」
にこっと笑いかけてくれるので、私もそれに応える。
ここのところ、やっと自然に笑えるようになったのだ。
それだけでも、ちょっと進歩したと思う。
千景さんが作ってくれた朝ごはんを、お言葉に甘えてゆっくり食べる。
もっと近くなりたい。
だけど、今のままで、もう十分かも。