赤ずきんは狼と恋に落ちる
背筋をピンと伸ばし、ガチャリとドアを開けると、ガツン、と硬い音が響いた。
「え……?あ、千景さん!ごめんなさい!」
ドアの前に居たのか、目の前には鼻を押さえている千景さん。
「ごめんなさい、急に開けちゃって!怪我してませんか?」
慌てて千景さんの顔を見ると、鼻の先端が少しだけ赤くなっている。
「あー……、大丈夫や。心配せんでええよ……」
そう言いつつも、声のトーンがいつもより低く、眉をひそめている。
何てことをしてしまったんだ、私は……!
急いでハンカチを濡らし、千景さんの鼻を冷やす。
「本当にごめんなさい」と、何度も言いながら、そっと鼻先を撫でた。