赤ずきんは狼と恋に落ちる
数分経つと、少しだけ赤みが引いてきた。
「りこさん、もう平気やから。ありがとな」
「そんな……。ぶつけさせちゃったのは私なんですし……。もう平気ですか?」
「大丈夫やって。りこさん、すぐに冷やしてくれたやん。ほら、もう出かけよ?」
ハンカチを離し、ゆっくりと立ち上がると、スッと手を差し伸べてくれる。
「あ、ありがとうございます」
そっと指先の方だけ載せ、私ものろのろと立ち上がる。
出かける前に、こんなことが起こっちゃって。
何だか、悪いことが起きそうな気がしてきた。
「行こか」
ほんのりと赤い鼻で、優しく笑う千景さんに、
少しの不安を持ちつつも、
「はい」
とだけ言い、手を引かれて玄関を出た。
私の気のせいでありますように。