赤ずきんは狼と恋に落ちる
千景さんと並んで、歩いて、お買い物。
街はすっかりクリスマスモードになっていて、お昼なのに華やかだ。
その華やかな街の中、ぶつけてしまった鼻が気になってしまい、何度も何度も見てしまう私。
雰囲気と自分とが、大きくかけ離れてしまっている。
自分が気を付けなかったばかりに、こんなことになってしまったのだ。
せっかく誘ってくれたのに、とんでもない事を………。
「りこさん?」
「えっ?はい?!」
肩をぽんぽんと叩かれるまで、呼ばれていることに気付かなかったみたいだ。
「何でしょうか?!」
「どうしたん、りこさん。さっきからぼーっとしとるし。疲れとる?」
千景さんは、右手と左手に、別々のマグカップを手に持ちながら、そう訊いてくる。
「大丈夫ですよ。それより、持ってるのは……?」
へらりと笑ってみせ、苦し紛れな話題転換。
すると、「ああ」と思い出したように頷き、右手に持った小さなマグカップを私に渡した。