赤ずきんは狼と恋に落ちる




***



「いっぱい買いましたね」



千景さんの買い物に付き合って、結構時間が経った。


小さな腕時計をチラリと見やると、針は3時半を回っていた。



マグカップを貰ってご機嫌の私は、千景さんの行くところを、ただついていき。


両手に大きな袋を提げた千景さんの手伝いをするだけだった。




「りこさん、重たない?」



信号で止まる度に、そう気遣ってくれる千景さんと、



「平気ですよ」


と、笑って答える私。



実を言うと、荷物を持たせるのは嫌だと、最初は断ってくれていた千景さんに、私がしつこく頼んだので、軽い袋を持たせてもらっているだけだ。




こうしていると、もっと近くに居れるような気がするから。



少し邪な気持ちを抱えたまま、信号を待った。





数分歩くと、千景さんのお店の近くにまで来ていた。


マンションから少し離れたここは、私はあまりよく知らない。


普段はお店にしか足を運んでいないからだ。




荷物を提げたまま、きょろきょろと見回していると、「りこさん」と声をかけられる。



「疲れたやろ?ここ店の近くやし、荷物置いてくるから、りこさんはあのカフェで待っとってくれへん?」


< 87 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop