赤ずきんは狼と恋に落ちる
***
「いっぱい買いましたね」
千景さんの買い物に付き合って、結構時間が経った。
小さな腕時計をチラリと見やると、針は3時半を回っていた。
マグカップを貰ってご機嫌の私は、千景さんの行くところを、ただついていき。
両手に大きな袋を提げた千景さんの手伝いをするだけだった。
「りこさん、重たない?」
信号で止まる度に、そう気遣ってくれる千景さんと、
「平気ですよ」
と、笑って答える私。
実を言うと、荷物を持たせるのは嫌だと、最初は断ってくれていた千景さんに、私がしつこく頼んだので、軽い袋を持たせてもらっているだけだ。
こうしていると、もっと近くに居れるような気がするから。
少し邪な気持ちを抱えたまま、信号を待った。
数分歩くと、千景さんのお店の近くにまで来ていた。
マンションから少し離れたここは、私はあまりよく知らない。
普段はお店にしか足を運んでいないからだ。
荷物を提げたまま、きょろきょろと見回していると、「りこさん」と声をかけられる。
「疲れたやろ?ここ店の近くやし、荷物置いてくるから、りこさんはあのカフェで待っとってくれへん?」