チェックメイト 。
第一章 -ポーン-

つまらない毎日

つまらない。
俺の毎日は同じことの繰り返し。
「駿様、お茶ですわ」
「お菓子も持ってきましたの」
街の中心にある一ヶ谷学園、金持ちばっかりが通う学校。
そこが俺の通う高校だ。
でも、俺は真面目な訳じゃない。
茶髪にピアス、見かけだけなら不良同然だ。
成績さえよければ何したっていいっていうけど、
こんな身なりのヤツは俺しかいない。
そのせいで周りにはキャーキャー五月蝿い輩が集まるって訳よ。
「俺のためにわざわざありがとう」
そういってにっこり笑えば頬真っ赤にして幸せそうにするんだから安いものだ。
休みの日には合コン、学校でだって口説き落とす。
イコールすればこうなるのも当然なんだよな。
教師だって誰だって俺のもの。いつの間にか恋も諦めてた。
恋なんか偽りだ、遊びこそが人生の楽しみではないか。遊びに飽きた人間がするのが結婚、まだまだ若い俺は遊ぶ権利がある。
そうずっと思っていた。
ほら、一夫多妻制度とかあるだろ?
「駿様ぁ、今回のご褒美の時間ですよぉ」
「ねぇー、ご褒美頂戴よ」
「駿くん、ほらぁ」
嗚呼、うるせぇな。
くねくねと躰を捩り媚を売る目、俺が大っ嫌いな姿。
そう、俺を生んだ奴とそっくりなその姿。
俺を生んだ奴は浮気性で、親父と結婚しときながらも浮気を幾度も繰り返した。
母親だなんて思いたくもない、あんな奴。
いつも首筋に紅い痕を残し、微かな煙草の匂いを漂わせて、派手に胸元を強調させた服を着て。
福沢諭吉の束を幾つか鞄に入れて帰ってくるあいつ。
「俺の収入が少なくってあいつには不自由ばっかりさせてるから、しょうがないんだよ」
親父の口から出るのは「しょうがない」という言葉だけ。
それでも離婚しなかったのは俺の為だったのだろう。俺の学費は俺の母親が全て負担した。
いつの間にか、親父も浮気するようになってしまった。
気づいた頃、俺はもう中学三年生だった。その時、俺の口から出た言葉、「俺、この家に居たくねぇ。学費と生活費だけ、仕送りしてくれねぇか」
毎月、五十万の生活費の仕送りがある。学費は別に負担してもらってる。
そんな五十万も使うわけねぇから毎月二十万は貯金。
もう貯金も大分貯まり、余裕で車数十台は買えるだろう。
でも、俺は使わない。だって、全部女共が負担してくれるから。
俺ら家族の人生を狂わせたのはあいつなんだ。
俺もいなければよかったんだろう。
なんで、俺は生まれてきてしまったんだろうか。
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