だんご虫ヒーロー。



一体何が起こっているのか分からずにいると、先輩の声が聞こえた。



「離せ、航平!!あいつが、あいつが李を殴ったんだぞ!?
一発殴らねえと気が済まないんだよ!!」



...え、私?
私が殴られたことに怒ってるの...?



どうして...?
どうして私のために怒ってるの...?



「...夕里ね、李ちゃんが倒れてるのを見て怒ったんだよ。
あんなに怒った夕里見たの、初めて」



初めて?
小さい頃から仲が良かった雪菜ちゃんでさえ、あんなに怒ってる先輩を見るのは初めてなの?



暴れている先輩を必死に押さえてる尾口先輩。
それをどこか苦しそうに見つめてる、雪菜ちゃん。



とにかく先輩は私のために怒ってくれている。
...私が止めないと。



そう思えば、私の口は自然と開いていた。



「...芹田先輩!!大丈夫ですから、私は大丈夫ですから...もうやめてください」



久しぶりに先輩を名字付きで呼んだ気がする。



今にも男に襲いかかりそうな先輩に必死にそう言えば、先輩はピタッと動きを止めた。



先輩の後ろ姿しか見えないから、先輩が本当はどういう表情をしているのか分からない。
でも手をギュッと力強く握っていて、悔しそうにも見える。


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