だんご虫ヒーロー。
【side 夕里】
沈黙の中に聞こえる、さざ波の音。
荷物をまとめて、持ってきたはずのカットばさみを探していたら部屋に雪菜が来て、話があると言われた。
今は海の家の隣のベンチにいる。
俺も帰る前にもう一度、雪菜と話したいと思ってた。
『………ごめん、雪菜の気持ちには答えられない。
雪菜をそういう目で見てないから…』
さすがにあの言い方は酷すぎたよな。
そういう目で見てないってのは1人の女性としてって意味だけど、俺にとって雪菜は特別だから。
ただ立ち尽くしてる俺を見て、ベンチに座る雪菜はふふっと笑った。
「…立ってないで座ったら?」
雪菜はポンポンとベンチを叩いた。
確かに。
俺だけが立ってるのも変だし。
雪菜と少し距離をおいてベンチに座る。
そんな俺を見た雪菜はプッと吹き出す。
「…そんな警戒しなくても、もう告白したりしないから」