だんご虫ヒーロー。



【side 夕里】



沈黙の中に聞こえる、さざ波の音。



荷物をまとめて、持ってきたはずのカットばさみを探していたら部屋に雪菜が来て、話があると言われた。



今は海の家の隣のベンチにいる。



俺も帰る前にもう一度、雪菜と話したいと思ってた。



『………ごめん、雪菜の気持ちには答えられない。
雪菜をそういう目で見てないから…』



さすがにあの言い方は酷すぎたよな。



そういう目で見てないってのは1人の女性としてって意味だけど、俺にとって雪菜は特別だから。



ただ立ち尽くしてる俺を見て、ベンチに座る雪菜はふふっと笑った。



「…立ってないで座ったら?」



雪菜はポンポンとベンチを叩いた。



確かに。
俺だけが立ってるのも変だし。



雪菜と少し距離をおいてベンチに座る。



そんな俺を見た雪菜はプッと吹き出す。



「…そんな警戒しなくても、もう告白したりしないから」


< 162 / 554 >

この作品をシェア

pagetop