だんご虫ヒーロー。
「…李ちゃんを見て、なんで私ってこんなにも弱いんだろうって思ったの。
それと同時にどうして李ちゃんはこんなにも傷ついてまで強くあろうとするんだろうって。
李ちゃん見てるとすごく勇気が出てきて、私も李ちゃんみたいに強くなりたいっていつの間にかそう思ってた」
クルッと雪菜は振り返って俺をまっすぐに見た。
風になびく髪を耳にかけて、雪菜は微笑む。
その強い目が一瞬、李の真っ直ぐな目と重なった。
「私、強くなるよ、夕里。
李ちゃんみたいに、誰かを守れるように。
失恋したからって誰かに八つ当たりしないで、前を向いて生きていけるそんな私になりたいの」
すると雪菜はポケットから俺が持ってきてた美容用のカットばさみを取り出した。
はさみ、どうりでないと思ったら雪菜が持ってたのか。
そして雪菜は俺に背を向けて、自分の髪にハサミを入れた。
止めることは出来なかった。
これが、雪菜の"決意"だから。
最後まで見届けてやるのが俺の役目だと思ったから。