だんご虫ヒーロー。



セミロングの雪菜の髪がどんどん短くなって、肩につかないくらいのショートになった。



雪菜から切り離された髪が、風に煽られ砂浜へと落ちる。



ハサミを持つ手が震えてるのが、遠くから見ても分かった。



雪菜は大きく深呼吸をして、バッと勢いよく俺の方へと振り向いた。



そして指差すように、ハサミを俺の方へと向けた。



「…これは失恋カットじゃないからね!
生まれ変わったって意味のカットだから!


次に夕里に会う時は強く可愛くなって、私を振ったこと後悔させてやるんだから…!」



ニコッと笑う雪菜の目元には涙が溜まっていた。



もう十分強いよ、雪菜は。



ヒトは強くなるって決意した時点で、強くなってるんだよ。



だって強くなるって決意するには、強い決断が必要だろ?



どうでもいい決断だったら、強くなるなんて考えない。



どうして俺の周りには強い奴ばっかいるんだろうな。



俺が弱く見えてくる。



雪菜がゆっくりと俺に近付いてきて、ハサミの持つ方を俺に向け差し出した。


< 166 / 554 >

この作品をシェア

pagetop