だんご虫ヒーロー。
セミロングの雪菜の髪がどんどん短くなって、肩につかないくらいのショートになった。
雪菜から切り離された髪が、風に煽られ砂浜へと落ちる。
ハサミを持つ手が震えてるのが、遠くから見ても分かった。
雪菜は大きく深呼吸をして、バッと勢いよく俺の方へと振り向いた。
そして指差すように、ハサミを俺の方へと向けた。
「…これは失恋カットじゃないからね!
生まれ変わったって意味のカットだから!
次に夕里に会う時は強く可愛くなって、私を振ったこと後悔させてやるんだから…!」
ニコッと笑う雪菜の目元には涙が溜まっていた。
もう十分強いよ、雪菜は。
ヒトは強くなるって決意した時点で、強くなってるんだよ。
だって強くなるって決意するには、強い決断が必要だろ?
どうでもいい決断だったら、強くなるなんて考えない。
どうして俺の周りには強い奴ばっかいるんだろうな。
俺が弱く見えてくる。
雪菜がゆっくりと俺に近付いてきて、ハサミの持つ方を俺に向け差し出した。