だんご虫ヒーロー。
…李……李……っ!
助けて……もも…っ!
「…え?綾女……?」
ふと綾女が私を呼ぶ声がして振り返る。
必死に私の名前を呼んで助けを求める、そんな声が聞こえた気がした。
「…李?どうしたの……?」
立ち止まって後ろを見つめる私に、隣にいた先輩が不思議そうな顔をして覗き込んできた。
おかしいな、確かに綾女の声が聞こえたはずなのに。
そこに綾女はいなくて、色んな人が行き交っている。
「…今、綾女の声が聞こえた気がして……」
先輩の方を見ずに、ただじっと声が聞こえた方を見つめる。
「綾女ちゃんらしき人はいないよ?
それに綾女ちゃんは、今日バイトなんでしょ?」
そうだった。
テスト終わって今日からバイトだってニコニコ笑顔で言ってたな。
……じゃあ、ただの空耳?
確かに綾女の声が聞こえた気がしたんだけどな。