だんご虫ヒーロー。



「謝る必要ないんだよ。
もものことだから、人助けをしてその髪を犠牲にしたんでしょ?


だからこの髪は、ももが頑張った勲章。
……頑張ったね、もも」



この言葉が聞きたかった。
彼の大好きな口から、彼の優しい声で。
そう思った瞬間にポロポロと涙が溢れだす。



彼方の身体に負担がかからないように、優しく抱きつく。



彼方は私の背中を優しくさすってくれる。



そういえば先輩もペンキ塗れの私を抱き寄せて、よく頑張ったって言ってくれたっけ。



ただの一言だけど、それが私の身体をうんと軽くする。



彼方の体温が心地よくて、すぐに涙も乾いてしまった。



彼方は私を抱き寄せて、何も言わずに頭を撫でてくれてる。



彼方に抱きついて思ったけど……
……少し痩せた……?



前に会った時よりも骨ばってる気がする。



でも彼方の笑顔は相変わらず暖かい陽だまりみたいに明るい。



……私が気にしすぎてるのかな?



「…彼方、少し痩せた?」



気になって聞いてみると、一瞬私の頭を撫でる彼方の手が止まった。
でもそれはほんの一瞬で、彼方はまた引き続き私の頭を撫でた。



「…少し痩せたけど、でも前よりは食べられてるよ。
食べてすぐ吐かなくなったし」



だから、心配ないよ。



彼方がそういうのなら、心配ないのかもしれない。



でもよかった。前より食べれるようになって。
前は具合が悪くなると食べたものを吐いてしまうから。


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