だんご虫ヒーロー。



私の表情を見て、先輩が苦しそうな顔をしてるなんて気付かなかった。



北村さんがふっと笑ったことも。



「…彼は李ちゃんの生きる意味なんだ……
お互いに大事に想い合ってるっていうのが伝わってくるよ。


あたしもそういう人に巡り会いたいなー」



舞踏会を夢見てるシンデレラみたいな、キラキラした目をしている。



北村さんにはもう隣にいるのに。



優しくてチャラい、王子様。



なんて先輩に言ったら、先輩は「チャラいは余計だよ」なんて言って怒るのかな?



思わず笑ってしまった。
先輩に何か言われてしまうかな。



先輩を見つめると、サッと目を逸らされてしまう。



え、先輩……?



「…紗奈、そろそろ行こうか?」



私から視線を外したまま、歩き出そうとする先輩。



どうして……?
どうして私と目を合わせてくれないの?



いつもは私の顔を無理やり覗き込んで、顔を見ようとするのに。



思わず歩き出しそうとした先輩の手を掴もうと手を伸ばす。



でもあとちょっとのところで、先輩の手には届かなかった。



先輩は気付かずにそのまま歩いて行ってしまった。


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