だんご虫ヒーロー。
促されるまま座椅子に座る。
夕里は勉強机に開きっぱなしの参考書を閉じている。
「……今日ね、李ちゃんに会ったの」
"李ちゃん"という名に、夕里の手が止まった。
でもそれはほんの一瞬で、夕里はまたすぐに手を動かした。
「…へぇ、そうなんだ。
久し振りに会えて良かったな」
ふっと微笑んでいるのが夕里の背中しか見えなくても分かった。
無理して笑ってるのバレバレだよ。
「……それで聞いたの。
夏休み以来、李ちゃんとまともに話してないんでしょ?」
勉強机の上を片付け終わった夕里は、ベッドに座って苦笑していた。
「…そうなんだ。
ほら、李には大切な彼がいるから他の男が近寄っちゃいけないかなって思ってさ」
何それ……
そんなのただの言い訳にしか聞こえない。
無理に笑う夕里の顔を見ていられなくて、下を向く。
ベッドの軋む音で、夕里がベッドに両手をついたのが分かった。
「…それでいいの?
もうずっと李ちゃんとこのままでいいの?」
言って欲しかった。
このままで言い訳ないだろって。
怒鳴るように言って欲しかった。
なのに夕里は変わらずにヘラヘラと笑っていて。