だんご虫ヒーロー。
「…なぁ、航平。
もし綾女ちゃんに彼氏が既にいたらどうする?」
航平にこんなこと聞いたのは、もう一声欲しかったのからかもしれない。
もう一度誰かに背中を押してもらいたかったのかもしれない。
航平は悩むことなく、答えはすぐに返ってきた。
『…奪ってやる。
綾女ちゃんの彼氏より俺の方が綾女ちゃんのこと好きなんだって、そいつに思い知らせて、綾女ちゃんを奪う』
ふっ、そっか。
それが聞けたらもう十分だ。
「…ありがとな、航平。
一応、お礼は言っとく」
『一応ってなんだそ……」
航平が言い終わる前に電話を切る。
クローゼットから適当に服を選んで、着替える。
雪菜から受け取った李の彼氏の情報のメモをポケットに入れ、部屋を出る。
どんなに考えても諦められない、李のことだけは。
だから足掻く。
それが無意味だったとしても、足掻いて足掻いて李が好きなんだと彼氏に言う。
例え、李が今の彼をとったとしても俺は李と距離をとったりしない。
李が俺に振り向くまで、何度でも足掻いてやる。