だんご虫ヒーロー。



カバンを持って病室の戸に手をかける。



その時、妙な胸騒ぎがした。




私がいない間に嫌なことがありそうな、そんな胸騒ぎ。
でもそれは一瞬で、気付けばすぐに治まった。



なんだったんだろう、今のは。



不安になって彼方の方を振り返る。
彼方はいつも見せてる笑顔で手を振っている。



変わらない、いつもの光景。



彼方の笑顔を見て一安心すると、私は彼方に微笑み返して病室を後にした。












「…えっと、綿は……」




駅前にある手芸屋に着き、お目当ての綿を探し歩く。



彼方って時々人使い荒いんだよね。



私に笑顔を見せれば何でもしてくれると思って。



ま、実際その笑顔にやられたんだけど…



お目当ての綿を見つけ、たくさん入ってるのを選びカゴに入れる。



彼方が綿を待ってそうだからさっさとレジに行こうとした途中、フワフワした毛糸を見つける。



白のフワフワした暖かそうな毛糸。



そうだ。
人使いを荒くしたお詫びとして、この毛糸で手袋でも作ってもらおうかな。



これで手袋を作ってもらったら、全身彼方コレクションになりそう。



そう思うと可笑しくて、クスクス笑いながら毛糸を何個かカゴに入れる。


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