だんご虫ヒーロー。
すると私の頬に手が触れて、涙を拭ってくれた。
え、嘘……
「…かな、た………?」
驚いて顔を上げると、少しだけ目を開けて私を見つめる彼方がいた。
「……も、……も…」
ゆっくりと私の名前を呼んで、頬を撫でられる。
私は慌てて彼方の手を両手で握った。
「…彼方……っ!」
私が名前を呼ぶと、彼方はわずかに眉を下げて困ったように笑った。
私の声が届いたんだ。
根元さんが言ったように何度も呼んでよかった。
これで大丈夫なんだよね?
意識を取り戻したから、彼方は助かるんだよね。
一安心してた私に、彼方の言葉は重くのしかかった。
「…ごめん……ね………」
え、なんで彼方が謝るの?
彼方はこうして意識を取り戻して帰ってきてくれた。
私にはそれだけで十分なのに。
それなのにどうしてそんな辛そうな顔をしているの?
訳が分からずに彼方をジッと見つめる。
彼方は弱い力で私の手を握った。