だんご虫ヒーロー。
原崎さんはしばらく自分の手元を見つめたまま無言だった。
「……李に約束を作って守らせてたのは、俺なんだ」
沈黙の後、原崎さんは驚くべき真実を口にした。
李に約束を作ったのは、彼だったのか。
どうしてそんなことしたんだ、彼は。
その約束のせいで、李はたくさん傷ついたんだぞ。
それを気にもせず約束をしたのか、この人は。
「…怒ってるよね。李は約束のせいで傷ついてるのに、どうしてそんな約束したんだって思ってるよね」
原崎さんは、悲しそうに眉を下げ俯いている。
「分かってるんだ。自分でも李に申し訳ないことをしてるって。
でもこれは李のためなんだ。
李がこの先生きていくために必要な、試練なんだよ」
李がこの先生きていくために必要なことなのか?
お団子頭でいることが?
困っている人を助けることが?
彼の言動は理解出来なかった。
「どうして李が傷つくと分かっていて、その約束を交わしたんですか?」
真っ直ぐに原崎さんを見つめる。
俺の視線に気付いたのか、彼はふっと笑って俺を見た。