だんご虫ヒーロー。



初めて知った。



彼方が私と交わした約束にそんな意味があったなんて。



ただ約束を交わしてた私とは違って、彼方はそこまで考えていたんだ。



俯いて考えていたら、先輩に顎をもたれ上を向かされる。



「…俺は本気だよ、李。
本気で李のことが好きだし、本気で李のことを支えたいと思ってる。

彼に頼まれたっていうのもちょっとあるけど、9割は俺の意思だよ」



真っ直ぐに見つめられ、逸らすことが出来ずに先輩を見つめる。



先輩は優しさに溢れた目つきで私を見つめる。



「だから李。
今度は自分を生きる意味にして歩いて行こうよ。


約束のためじゃなく、誰かのためじゃなく、自分のために生きよう?


最初は挫けてもいい。
李が転んだら、俺が隣にいてちゃんと手を差し伸べるから」



ニコッと笑って先輩は私の手を握った。



自分のために生きる……?
自分を生きる意味にする……?



そうだ。
今までは自分の意思で動いてるつもりでも、どこかでは約束だからって言い訳をつけて生きてた。



傷つくのも仕方ないんだ、約束だからって思い込んで自分の気持ちなんか考えようとしなかった。



私、本当は何をしたかったんだ?



本当はどんな気持ちだったんだ?



他人の気持ちばかり考えてて、自分の気持ちなんて後回しにしてた。



『"約束"に囚われすぎて変われないのなら、俺は約束を破ってでも変わろうとする』



先輩に髪を切られた時に言われた言葉をふと思い出した。


< 312 / 554 >

この作品をシェア

pagetop