だんご虫ヒーロー。
ふわり
先輩に想いを伝えた瞬間、抱き締められた。
ジュリエットの紐は地面に落ちたけど、ジュリエットは大人しいからそこから動かない。
先輩の肩口を見つめると、若干震えているのが分かった。
「……せんぱ、い……?」
先輩の胸を押すと、先輩から簡単に離れられた。
先輩の顔を覗き込んで、驚いてしまった。
だって先輩が泣いていたから。
目に涙を浮かべて号泣ってわけじゃないけど、涙が太陽の光で光っている。
「…ごめん。すごく嬉しくて、つい。
男が両想いになったくらいで泣くなよって話だよな」
先輩はハハッと笑って涙を拭っている。
初めて見た。先輩が泣いてるところ。
涙を流して喜ぶほど、私のことを好きでいてくれたのだと伝わってくる。
私はこんなにも先輩に思われていたんだ。
先輩の涙さえ、愛しく思えてしまう。
「…そうですよ。問題はこれからなんですから」
着ていたパーカーの袖で先輩の涙を拭う。
先輩は目を閉じて笑っている。