だんご虫ヒーロー。



「…そこのお二人。公共の場で淫らなことしないでください」



誰もいないはずの公園から声が聞こえて振り返ると、綾女が頬を膨らませて仁王立ちしていた。



袖口や裾のフレア、胸元のレースが華やかなチュニックワンピを着ている可愛らしい綾女の背後から金剛力士像が見える。



「…時間通りに来てみれば……何してるの?李」


「ち、違うよ!離れようとしたのに先輩が離してくれなくて……!」



慌ててたのがいけなかった。
また夕里を先輩と呼んでしまった。



それをしっかりと聞いていた夕里はクスッと笑って、「あとでお仕置きね?」と耳元で囁いた。



顔が真っ赤になる。
そのまま夕里を見ると、夕里は私の頭に手を置いてニコッと笑った。



夕里の完璧な笑顔に見惚れていると、綾女の大きなため息が聞こえてきた。



「あー、はいはい。昼間からご馳走様でした」



綾女は手を叩いてこの甘い空気を打ち砕いた。



何もかも夕里のせいだという目で、夕里を睨む。



夕里は困ったように笑った。



「…あ、それで綾女。話っていうのは……?」



夕里から視線を綾女の方へと向ける。



この話を切り出した途端、綾女の顔が曇った。



「……綾女?」



名前を呼ぶと綾女は我に返って、私達に背を向けた。



「…ここじゃないとこで話すから…」



それだけ言うと、綾女はヒールの音を鳴らして歩き出した。



私と夕里は互いに見つめ合って首を傾げる。



そして綾女の後について歩き出した。


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