だんご虫ヒーロー。
綾女の後をついていくと、辿り着いたのは学校だった。
今日は祝日で部活もなく、学校には誰もいない。
私達はこっそりと裏口から学校に入り、体育館裏へとやってきた。
ここは私の運命を変えることになった、ペンキ事件のあったところ。
今思うと嫌なような良かったような思い出になっている。
綾女は壁についている黒いペンキをしばらく見つめて、やがて私と夕里の方へと向く。
表情は曇っていて、言いづらそうに下を向いている。
言いづらいなら無理して言わなくても……
そう言おうとしたら、夕里に肩を掴まれた。
「…今ここで無理しないでって言ったら、綾女ちゃんの勇気が無駄になっちゃうから。だから待ってよ?」
小声で囁き、微笑む夕里。
綾女も今、殻を破ろうとしてるんだね?
心の中でしか言えないけど、頑張れと綾女を応援する。
しばらくすると綾女は顔を上げて、夕里を見た。
「…芹田先輩……李のことを諦めてと言ってわざと李から離したこと、謝ります。ごめんなさい」
綾女は深く頭を下げた。
私から夕里を離した……?綾女が?
訳が分からずに夕里を見上げる。
夕里は困ったように眉を下げ笑った。