だんご虫ヒーロー。
「どうして毎回のテストが学年トップの先輩方が、こんな悪さをするんですか…?
私には真面目な先輩方が悪さをするような人には見えません」
グッと込み上げてきた感情を拳に抑えて、武井先輩を見る。
武井先輩は腕を組んだまま俯いていた。
すると先輩の肩が震えているのが分かった。
その瞬間ーーー
「……ハハッ………アハハハハハッ!」
武井先輩は声を高らかに空を見上げて笑い出した。
何がそんなに可笑しいの……?
武井先輩は笑い終わるとしばらく空を見上げたままでいた。
「………ほんっとアンタって能天気だよなぁ、だんご虫」
武井先輩は私の方を見た。
その目つきはさっきよりは鋭くはなかったけど、今までよりも一番ゾッとした。
先輩は一歩一歩私に向かって歩き出した。
左右の2人は腕を組んだまま立ち止まっている。
「…私にはあなた達が悪さをするようには見えません?
そう言われて喜ぶのは自意識過剰なアンタとか北村ぐらいなんだよ!
あたしらは汚れ仕事を食料に生きてんだからな。そんなこと言われたって嬉しくないんだよ!」
武井先輩は喋りながら一歩一歩着実に私に近付いてくる。
私の足は反射的に後ろへと下がっていく。
「…アンタはいいよなぁ?
あたしらとは違って表でヒーローぶって注目浴びてんだからさ。
あたしらがヒーローぶったって誰も見てくれないよ」
ドンッ
体育館の壁が背中に当たった。
これ以上は後ろに下がれないということを意味していた。