だんご虫ヒーロー。
武井先輩は私の目の前で立ち止まり、見下ろすようにして私を見つめる。
「あたしらが毎回のテストで学年トップなのは、成績が良ければ悪いことをしても何も言われないからなんだよ!
アンタの予想通りじゃなくて、残念だったな〜」
……違う。絶対そんな理由じゃない。
だって真っ直ぐに私を見つめる先輩の黒目が揺れている。
さっきまでは揺れることなく私をしっかりと映してた。
「…嘘です。
悪いことをするために勉強して学年トップになるなんて普通の悪い人は考えません。
学年トップでい続けるのも、悪さをするのも何か理由があるんですよね?
理由がなければ頭のいい先輩はこんな悪さするわ……」
言葉が途中で途切れたのは、武井先輩に胸倉を掴まれたから。
グッと引き寄せられて睨まれる。
続きを言いたいけど先輩の怖い目つきに、声が出ない。
「…理由?そんなのアンタに言ってなんになるわけ?
あったとしてもアンタには分からないよ、アタシ達の気持ちなんて。
アンタみたいに周りに支えられて守られて大切に育てられてるアンタにはわかんないんだよ……!」
一瞬、ほんと一瞬だけだったけど、先輩が泣きそうな表情をした。
今のは……なに?
でもそれはすぐに鋭いものに変わって、武井先輩は私を睨む。
そして掴んでいたワイシャツを勢いよく離す。
その勢いで私は壁へ打ちつけられる。