だんご虫ヒーロー。



「…ただいま」


「…お邪魔します」



夕里は緊張してるのか、声が若干上ずってる。



すぐにパタパタと玄関に走ってくる足音が聞こえた。



「……おとうさ……」



お父さんって呼ぼうとしたけど、現れた姿はお母さんだった。



「…今日はお父さんにするんじゃなかったの?」



朝、「今日はお父さんになるよー」って張り切ってたのに。



「…夕里くんにはこっちの姿も見せた方がいいかと思って」



お母さんは苦笑いして私を見てる。



全く、この人は気分屋だから困る。



何が何だか分かってない夕里に、お母さんは笑いかけた。



「…夕里くんよね?李の母です。
この前は李のことありがとう。さ、上がって」



お母さんの完璧な笑顔に、夕里はポカンと口を開けている。



どうせまた言葉が出なかったんだ。
相手はお母さんだって分かってるけど、嫉妬してしまう。



私は夕里の足を踏んでから先に家にあがった。


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