だんご虫ヒーロー。
「英玲奈は李がまだ5歳の時にがんでね。幼い子というのは母親が必要だろ?
母の優しい愛が子供を大きくさせる。
でも李には母親がいなくなってしまった。
それをどうにか出来るのは父親である私しかいない。
再婚も考えたんだ。
でも私は英玲奈以外とは一緒になりたくなかった。それほどに英玲奈を愛していたからね。
それで私が李のお父さんとお母さんになろうと思って、あんな女装を始めたんだ」
私はお母さんが大好きだった。
お母さんが大好き過ぎて、お父さんに幼いながらも嫉妬したこともあるくらい。
お父さんはそれを知っていた。
もしお父さんが再婚しても、きっとそのお母さんとは仲良くなれなかったかもしれない。
だってお母さんは、血の繋がったお母さんはたった一人だから。
お父さんもそれを考えてきっと再婚しなかったんだろうな。
もうお母さんとの思い出は薄れてるけど、あの仏壇の写真を見る度、胸を締め付けられる。
キュッ
膝の上に置いてた手を夕里は優しく握ってくれた。
どうして私の周りの男の人はみんな、私が何も言わなくても分かってくれるのだろう。
私の手を握る夕里の手を見て、お父さんはふっと笑った。
「…李が幼い頃はお金がなかったから昼間は会社に勤めて、夜は女装して秘密にスナックで働いたりとにかく仕事ばかりだったから私だけじゃ李を育てるのに力不足でね。
その時に李は彼方くんに出会って、少し協力してもらってたんだ。
彼方くんまでも亡くなってしまった時は、どうしようか焦ったよ。
私じゃ、李の傷は簡単に癒せないからね。
そんな時に、君が来たんだ」
お父さんは優しい瞳で夕里を見つめた。