だんご虫ヒーロー。
スピード婚って聞いたことあったけど、まさか自分の身に降りかかってくるとは……
あ、今すぐにってわけじゃないよね。
こんな感じでとにかく私の頭の中は冷静ではない。
「…でも俺は李の夫になるためには未熟すぎる。
李の隣に並ぶにはまだ実力や強さが足りないんです。
だから高校卒業後、パリへ渡り美容の道を極めようと考えてます」
パリってヨーロッパにあるフランスの首都だよね?
じゃあ夕里は高校卒業したら留学するってこと?
なんでまたいきなり……
「……本気なのか?」
「…はい。もう推薦でパリの美容系大学に合格しました」
もう合格しました?
合格したのに、なんで私には一言も言ってくれなかったの?
私の驚いてる表情を見て、お父さんは私が知らなかったということを理解したようだった。
「…夕里くんがパリに行くとなったら、李はどうするつもりなんだ?一緒に連れて行くのか?」
お父さんの問いに夕里はすぐには答えなかった。
言いづらそうな表情を一瞬見せてから、また真剣な表情になった。
「…いえ。パリには俺一人で行きます。
李には李のやることがあると思いますので」
一人。
その言葉を聞いた瞬間に居ても立っても居られなくなった。
「……李…!」
お父さんに呼ばれても気にせずに、私は堪えきれなかった涙を流して自分の部屋へと駆け出した。