だんご虫ヒーロー。
「…どうして、どうしてこんなことをするの?
誰かを怖がらせて傷つけてまで、夕里が欲しいの?」
夕里の名前を出すと、北村さんの目つきが鋭くなった。
「そのことをあんたに言って何になるってわけ?
あたしのこと何にも知らない奴に同情されたって、嬉しくないのよこっちは…!」
怒りを表すように、北村さんはグシャッと持っていた紙を丸めた。
私は北村さんに同情しようだなんてこれっぽっちも思ってない。
「…私は北村さんを助けたいの。
こういうことをするのには何か訳があるんでしょ?
武井先輩達の傷も、北村さんの傷も私は助けたいの」
胸に手を当てて北村さんに強く訴えかける。
武井先輩達にも伝わるように。
北村さんは武井先輩としばらくジッと見つめ合うと、
「「…ハハ………アハハハハハハッ!」」
2人同時に笑い出した。
徳永先輩と時田先輩は笑わずに、下を向いている。
「あたし達を助ける?さすがヒーローは考えることが前向きよね!
逆にその前向きさに尊敬しちゃうわ!」
北村さんは涙目になりながら、お腹を抱えて笑っている。
武井先輩は話すことも出来ないほどに笑ってる。
「それで、何?あたし達みたいな悪を助けて、みんなで幸せになってハッピーエンド?ハハハハハ……」
今まで笑っていた北村さんは急に黙って、俯いた。
そして顔を上げると、その表情はまた冷たいものに戻っていた。