だんご虫ヒーロー。



「…ふざけないで」



北村さんはグシャッと丸めた紙をコンクリートの地面に叩きつけて、上履きで踏んだ。



そして一歩一歩私と綾女に向かって歩いてくる。



「…ハッピーエンドを迎えられたのはあんただけなんだよ?李ちゃん。

あたしはたった一人の大切な、好きな人を出しゃばったヒーローに奪われてバッドエンド。

誰もあたしを守ってくれないし、見てもくれない。あたしの未来に光なんてもうない。

あんたのせいだよ、だんご虫」



私の目の前で止まり、私を見下すように睨んでくる北村さん。



その威圧感に言葉が出ない。



「あんたが横から夕里を奪っていったから、あたしは何もかも失った!
なんで夕里をあんたみたいな女に奪われなくちゃいけないわけ!?

あたしの方がずっと夕里の近くにいて、夕里のことよく知ってるのに!
なんで夕里はいきなりノコノコやってきたあんたを選ぶわけ!?意味わかんない!」



これは……北村さんの本音?



私に本音を本性でぶつけてきてくれてるの?



私は北村さんの本音が、助けを求めてるように聞こえた。



何もかもなくなったらどうやって生きていけばいいのか教えてよって、言われてるよう。



助けたいって言われて、不快に思う人なんていないよね?



少なくとも私は不快にはならない。



助けたいって言われるだけで、心は少し軽くなる。



私を助けてくれる人がいるんだって、頼もしくだって思える。


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