だんご虫ヒーロー。
その証拠に、北村さんの顔に本当の気持ちが表れてる。
泣きそうな苦しそうな表情をして、私を見てる。
表情は自然と顔に出てしまうから、きっと北村さんは自分が悲しい表情してるなんて思ってない。
助けなきゃと思った瞬間、北村さんに胸倉を掴まれて我に返った。
私のワイシャツを掴む反対の手が振り上げられた。
「あんたのせいだ。あたしがバッドエンドになったのも全部、あんたがあたしから夕里を奪ったから……!
許さない…絶対にあんたを許さない…!」
北村さんの挙がった手が振り下ろされた。
平手打ちされる……!
怖くて思いっきり目を瞑ったけど、いつまで経っても頬に痛みはやってこなかった。
恐る恐る目を開けると、北村さんの振り下ろされた手は私の頬の一歩手前で止まっていた。
北村さんの手首を見ると、私の横にいる人に掴まれていた。
横を見るとそこにいたのは見たことのない男子生徒だった。
いや、見たことある。
前に武井先輩達を呼び出した時に見てた人だ。
ワイシャツのボタンを二つ外し、ネクタイを緩く結んで着崩している。
頭は坊主頭で、野球少年って感じの男子生徒。
屋上まで階段を一気に上がってきたのか息があがってる。
北村さんは今まで以上に鋭い目つきでその男子生徒を睨んでいる。