だんご虫ヒーロー。
ナンパじゃないのか、と綾女は男性に聞こえないように舌打ちをした。
私には聞こえていたから、綾女の横腹を軽く肘でつつく。
「…あの、聞きたいこととは……?」
180はあるであろう長身の男性を見上げる。
首が疲れそう。
すると男性はある人物の名前を口にした。
「…武井りかという少女を知ってますか?
そこの学校の3年で、結構ヤンチャな少女なんだけど…」
え、武井先輩?
なんでこんな男性(ひと)が武井先輩を知っているんだろう。
武井先輩のご家族か従兄妹とかかな?
「…い、一応知り合いですけど……」
先輩と仲良く話したことないけど、一応知り合いではある。
知り合いと聞くとさっきの表情とは違い、男性の表情は明るくなった。
「ほんとか!?りかと最近連絡が取れなくて…!
早苗と花織も電話に出ないんだ」
急に喋り方が変わった。
しかも武井先輩達のことを名前で呼んでる。
これはただの関係じゃない。
武井先輩達とどういう関係なのか聞こうとしたら、予鈴が学校から聞こえた。
「あ、予鈴か!この話はまた放課後に!
授業遅れるなよ……!」
男性は名乗ることもせずに走り去って行った。
私と綾女は訳分からず、とりあえず急いで教室に向かった。