だんご虫ヒーロー。
「…そんなに泣くな。今すぐに向かうから待ってろ!」
根元さんは電話を切ると、素早くジャケットを着た。
「…根元さん。電話の相手、徳永先輩ですよね?
何があったんですか?」
話しかけないと黙ってどこかに行ってしまいそうな根元さんに立ち上がって声をかける。
私の声にハッと我に返ったのか、乱れた気持ちを落ち着かせるようにため息をついた。
「…今早苗から電話があって、家の近くのスーパーに強盗犯が立てこもってるらしい」
「……え、……」
強盗犯ってもしかして今朝ニュースで見た事件と同じ犯人?
綾女は驚いて口を手で覆っている。
「早苗と花織は逃げ出せたようなんだが、自ら囮になったりかがまだスーパーの中にいるらしい。
犯人はかなり暴走してるみたいで、りかの命が危ない…!」
ドンッ
悔しそうにテーブルに拳を叩きつける根元さん。
武井先輩が危ない……?
それなら……
「……根元さん、私も行きます。
武井先輩を助けに一緒に行きます」
「え、李!?」
綾女と根元さんは目を見開いて私を見た。
でも根元さんだけはすぐに目つきを鋭くした。
「だめだ。一般人である君を危ない所には連れて行けない」
それはそうだ。
警察官が事件先に一般人を連れていくわけがない。
そんなの分かってる。
分かってるけど、私はもう決めたから。