だんご虫ヒーロー。



さすがに鋭いな、花織は。



早苗も「そうだよ〜、りかちん」と心配そうにアタシの手を握る。



こういう時くらい、自分のことだけ考えてればいいのに。



「……おい、そこで何してる?」



さすがに騒がしかったのか、犯人がアタシ達に気付いてしまった。



チッ、ここまでか。



アンタ達は出てくるなよ?と目で合図する。



早苗と花織はアタシの手を最後まで離そうとしなかった。



早苗と花織の手が離れると同時に、アタシは犯人に姿を見せた。



「…いや、また馬鹿な犯人がいたなって思ってたんだよ」


「……なに?馬鹿だと……?」



犯人の眉間にシワが寄ったのが分かった。



人質の母親は涙目でアタシを見ている。



アタシはゆっくりと歩き出し、早苗達とは反対側へ向かう。



「…だってそうだろ?こんな大きなスーパーで立てこもって。
アタシだったらコンビニとか小さいとこで立てこもる」



犯人はアタシの歩くペースに合わせて、向きを変える。



犯人が早苗達に背を向けた。



それを合図に早苗達は物音をたてないように動き出した。



「…俺は馬鹿じゃない!!」


「…ひぃっ!」



犯人は怒り、人質にナイフを深く突きつけた。



人質の母親は首をナイフから遠ざけ怯えている。



早苗達は非常出入口近くの客をゆっくりと誘導している。


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