だんご虫ヒーロー。
ガシッ
「…ハッ、神様はこんなもんの力しかないのかよ。
女のアタシが止められるなんて、弱い神様だな?」
力強くナイフを握ってるせいで、掌が切れて血が次々と床に落ちる。
子供はアタシの後ろで尻もちをつき、怯えている。
「……おい、ガキ。こんなんで怖かってんじゃないよ。
さっきの度胸はなんだったんだよ。アンタの母親、自分で助けようとしたんだろ?
一度助けるって決めたなら、最後までやり通せよ」
悪さも、一度やると決めたらやり通す。
中途半端が一番嫌いなんだ。
子供はしばらくしてから、倒れてる母親の方へと駆け寄った。
驚いている犯人はふと周りが静かなのに気が付いて辺りを見回した。
ほんと馬鹿な神様だな、こいつは。
「…だから後先考えずに突っ走って、痛い目見るんだよ、ばぁーか」
アタシの言葉に、犯人の怒りが有頂天に達した。
「くそがぁぁぁぁー!!!」
犯人はもう片方の手で忍ばせてたらしいナイフを取り出し、アタシの顔に切りつけた。
反射的に避けられたけど、頬が少し切れた。
すると鳩尾(みぞおち)に一発膝蹴りが入った。
立っていられなくてその場に倒れ、腹を抱える。
ヒトは怒りの頂点に達すると、こんなに強くなるんだな。
馬鹿神の威力も半端じゃないほどに強い。
こりゃあ、ダメかもな。
犯人の持つナイフが振り下ろされようとした時。