だんご虫ヒーロー。



子供とその母親がいなくなった今でもアタシの手には暖かさが残ってる。



「…なぁ、だんご虫。人助けってなんだよ。アタシは何かを誰かを助けたのか?」



包帯で巻かれた手を見つめる。



だんご虫からの返事はしばらくなかったけど、やがてアタシの手を優しく握ってきた。



驚いてだんご虫を見ると、だんご虫は満面の笑顔だった。



「…困ってる人、苦しんでる人、悲しんでいる人を助けるのが人助けです。

先輩は殺されそうになったあの子供をこの手で助けた。
それは目立ちたかったからじゃないんです。

ただ助けようと考えた行動なんです。
だから先輩のこの手はとても暖かいんです」



優しい眼差しでアタシの手を見つめ、優しく撫でるだんご虫。



何だろうな。
親なんていたことないけど、その時だけは親の暖かさのようなものを感じた。



だんご虫は真っ直ぐにアタシを見つめる。



「…先輩は誰かを助けたことで目立ちたがり屋の"悪い人"から、目立ちたがり屋の"いい人"に生まれ変わったんです。

だから先輩、目立つのならいい事をして目立ちましょうよ。
あなたはこんなにも暖かくて心優しい方なんですから」



小首を傾げてまたニッコリと笑う、たんご虫。



何だよ……何様だよ、こいつは…



アタシのことなんでも知ってるみたいに言いやがって。



だから嫌いなんだよ。


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