だんご虫ヒーロー。
止まらない涙を拭っていると、いつの間にか来ていた早苗と花織がアタシの肩に手を置いた。
振り返ると2人共、目に涙を浮かべ微笑んでいた。
そしてその背後には困ったように笑う時雨がいた。
3人を見れば自然と涙は止まっていた。
「…新しい先輩、初めまして。私は篠山李です。あなたの名前を教えてくださいませんか?」
だんご虫の声が聞こえその方へ向けば、だんご虫が微笑み、アタシに手を差し出してきた。
新しい先輩……か。
ハッ。悪くないかもな、新しい自分になるのも。
アタシは自然と笑顔でだんご虫の手を握っていた。
「…アタシは先輩なんていう大層なモンじゃないよ。
武井りか。ただの武井りかだよ、李」
ヒーローは悪者でさえも、殺さず味方にしてしまう。
悪者は悪者だなんて決めつけず、同じ仲間だと言い張るんだ。
悪者なんかやっつけちまえよ。
昔のアタシはヒーローのすることが理解出来なかった。
でも今、やっと分かったんだ。
ヒーローは悪者をやっつけるためにいるんじゃない。
ヒーローは悪者の悪さを正して、生まれ変わらせるためにいるんだ。
ヒーロー(李)が悪者(あたし)の悪さを正したみたいに。
悪者だって、その道を正せばいくらでも何度でも生まれ変われるんだ。
【side end】