だんご虫ヒーロー。
家に入ると朝食のいい匂いがした。
もしかしてお母さんもう起きてるの?
匂いに誘われるようにリビングへと行くと、トーストをかじっているお母さんがいた。
「…あら、おはよう。李」
私に気付くとお母さんは完璧な化粧をして笑顔を見せた。
仕事は夜なんだから、朝くらいお父さんでいればいいのに。
なんて思いながらも口には出さず、「おはよ」と言って荷物を持った。
「…じゃあお母さん、行ってくるね」
お母さんに軽く手を振って玄関へと向かう。
するとお母さんは後からついてきて、お見送りをしてくれた。
「…あ、そうだ。李?」
「ん?」
ドアを開けようとしたら背後にいたお母さんに呼び止められた。
ドアノブに手を掛けたままお母さんの方を向く。
お母さんは顔を近付けて囁く。
「…ちゃんと避妊はするのよ?」
……は、はい!?
何言ってるの!?この人は!
彼氏の家に泊まりに行く娘に言う親の台詞じゃない。
顔が熱くなる。
お母さんは妖艶に微笑んでる。
私は顔が赤いのを見られたくなくて素早く家を出た。