だんご虫ヒーロー。



美夕紀さんは美容院『happy bell』を経営してる。



そういえば夕里にペンキのついた私の髪を切ってくれたのがここだったなと思い出した。



あの時チラッと見たのは美夕紀さんだったんだ。



美夕紀さんは25歳で、この若さで美容院を経営するのはかなりの腕が必要らしい。



美夕紀さんはすごい人なんだな。



そんなことを考えているとあっという間に夕里の部屋に到着した。



「…し、失礼します……」



恐る恐る中に入る。
夕里の部屋はシンプルで着飾ってない。



それに荷物はパリへは持って行かないらしく、そのままになってる。



夕里の部屋、初めて見た。



いつも嗅いでる、夕里の匂いがする。
……ってなんか変態っぽい?



私の荷物を持っていた夕里は、部屋の中に荷物を置いて私の方を向く。



「…どうしたの?緊張してる?」



誘ってるようなその眼差しに、お母さんの言った言葉を思い出してしまう。



『…ちゃんと避妊はするのよ?』



「…そ、そんなつもりで来たんじゃないからっ!!」


「……李?」



もう口を押さえても遅いと思った。
だって口からもう言葉を発していたから。



夕里は小首を傾げて私をジッと見つめる。



「…え、あ、や、何でもない…!」



恥ずかしくなって夕里から顔を逸らす。



こんな赤い顔を見たら、夕里は私が何を考えているのかすぐに分かるんだろうな。


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