だんご虫ヒーロー。



下を向いていると、夕里がゆっくりと近付いてきて私の顔を覗き込んだ。



「…李が考えてることは、夜にじっくりと…ね?
その前に李のご要望に応えないと」



ちゅっ
鼻先に軽くキスをされ、頭を撫でられる。



頭を撫でていた手は私の手を握り、私を目的地へと引っ張っていく。



夕里がパリへ行く前に、私は夕里に頼み事をした。



これは夕里じゃなくても出来るけど、夕里だけにやって欲しいこと。



夕里に引っ張られて連れて行かれたのは、美容院の個室。



「…懐かしい……」



あの時と何も変わってないな。



ここは自分を変えようと思ったきっかけの場所。



ペンキがついた私の髪を夕里が切って、私を変えた。



椅子に座ると前にある鏡を自然と見つめる。



私の後ろに立つ夕里は、私の髪を優しく梳いて鏡越しに私を見た。



「…李、本当に切っちゃっていいの?
それに俺がまた切ってもいいの?」


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