だんご虫ヒーロー。
夕里は不安そうに私を見つめる。
なんて顔してるの、全く。
前は『俺を信じろ!』って言ってほぼ強制的に切ったくせに。
「切るっていっても傷んでるとこだけだよ?
それに私のこと一番分かってる夕里に切って欲しいから」
パリに旅立つ前に夕里に髪を切って欲しかった。
夕里に切ってもらったら、また自分が変われる気がしたから。
それと、夕里が私のために切ってくれたという特別が欲しかった。
夕里はしばらく私を見てからふっと笑って、胸下まで伸びた私の髪にハサミを入れた。
真剣な顔つきでハサミを扱う、夕里。
ふふっ、若干緊張してるみたい。
これでパリへ修行に行ってもっと上手になれば、どんな夕里になるのかな?
目を閉じて、未来の夕里を想像してみる。
そう遠くない未来のことでも、まだハッキリしなくて、でも想像すると何だかむず痒かった。