だんご虫ヒーロー。



するといきなり夕里に力強く抱き締められた。



「…ゆ、ゆうり……?」



夕里の顔を見ようとしたけど、私の首筋に顔が埋まっていて見えない。



しばらくの沈黙の後、夕里はか細い声で私の耳元で囁いた。



「……李が今すぐに欲しいんだ………」



え、欲しいって……



夕里のその一言で、私の顔は一瞬で熱をもつ。



でも夕里の体が震えていることに気付くと、顔の熱は次第に落ち着いていく。



「…パリに留学するって勝手に自分で決めたのにさ、いざ明日出発するってなったら怖くなった。

俺が遠くに行ってる間に、李が他の誰かを好きになって俺から離れてしまうんじゃないかって考えてちゃったんだ」



夕里の言葉に頷くことも返事をすることもしない。
今の私がすることはただ黙って夕里の話を聞くことだから。



「…李が他の誰かを好きになるくらいなら、俺が遠くに行く前に李を俺のものにしてしまおう、なんて考え出したら止まらなくなってた。

ごめんな、李。いきなりすぎて怖かったよな」



夕里は顔を上げ苦笑いすると、私から離れた。



……そっか。
明日、夕里はパリへ旅立ってしまうんだ。



夕里に言われ、今になってその事実が現実味を帯びてきた。



夕里がパリへ行くって聞いた時、最初はしっくりこなかったせいか軽く考えてた。



でも現実はそんな軽くない。



夕里はパリへ、遠くへ行ってしまう。



そうなったら私と夕里は離れ離れになる。


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