だんご虫ヒーロー。



綾女みたいにすぐ感じたことを表に出せたらどれだけ楽なんだろう。



私はそんな育ち方してないから、すぐに表に出せないんだ。



無理して自分の気持ちは置き捨てて、人助けしてきたから。
こういう時に素直に寂しいとか泣けたらいいのに。



心の中で閉じ込めてしまうからダメなんだな、私は。



雪菜ちゃんと尾口先輩と楽しそうに話していた夕里は腕時計を見ると、便の出発する10分前までに迫っていた。



「…あ、そろそろ行こうかな」



夕里はキャリーバッグを持ち、こっちを向いた。



「…じゃあ、行ってくるね?」



夕里は私の頭を優しく撫でる。



この優しい手もしばらくは触れられない。



そう思うと寂しさがより一層増してきて溢れ出してくる。



でも心と表は矛盾してしまう。



「…うん、行ってらっしゃい」



そう笑顔で夕里を見つめる。



なんて馬鹿なのだろう。



素直に「寂しい」って言って泣けばいいのに。


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