だんご虫ヒーロー。



夕里は私の心情を察したのか、眉を下げ困ったように笑った。



そして前を向いて、ゲートへと向かう。



その夕里の背中が、一瞬だけ彼方に見えた。



遠くへ行ってしまった、私の最愛だった人の面影と重なる。



私に笑顔を見せて、どこか私の届かない遠くへ行こうとしている。



待って。私を置いていかないで……



「……李………?」



私はいつの間にか夕里の服の袖を掴んでいて、目からはポタポタと涙が溢れていた。



振り返った夕里が涙を流す私の顔を覗き込む。



「…ご、ごめん……止めるつもり…なかったのに……なんでかな…夕里が彼方と重なって見えちゃって……

…何…考えてんだろうね……私。
夕里は届かないところに行くわけじゃないのに……もう、大丈夫…だから、行って?」



涙を拭いながら笑う。



いつまでも止めてたら夕里、飛行機に間に合わなくなっちゃう。



ゆっくりと夕里の服の袖を離す。


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