だんご虫ヒーロー。



体育館裏の壁を見れば黒のペンキが付いている。



武井りかがペンキをぶちまけたのは確か。



じゃあもしかして…



あたしはゆっくりと覗き込むように李ちゃんの背中を見た。



…っ!!



言葉が出なかった。
なんでそこまでして誰かを助けようとするのか理解できない。



李ちゃんの肩から下の髪が全て黒いペンキが付いていた。



制服のブレザーにも満遍なくペンキが付いている。



自分が大変な目に遭っているのに、



「良かった、髪にペンキは付いてないね」



なんて言ってあたしの髪を見て笑ってる。



「…あたしなんかより、李ちゃんの髪が…!どうしてそこまでして…!!」



数日前に出会ったばかりの人にどうしてそこまでして自分を犠牲にできるの?



確かに誰か助けてって思った。



でもそこまでして助けて欲しいなんて思わなかった。



ただあのペンキの入った缶を取り上げて、別のところにぶちまけてくれればよかったのに。


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