だんご虫ヒーロー。



「……紗奈……良かった…
生きてて……目を覚ましてくれて…良かった……」



斎賀くんは北村さんの手を包み込むようにして両手で握った。



「…斎賀くんね、北村さんに一番に駆け寄って、李と交互に名前呼んでたんだよ?

看護師さんが大丈夫って言ってるのに、お医者さんに駆け寄って『紗奈は!?紗奈は!?』ってずっと聞いてたんだよ。

この世に生きてて価値がないなんて人、いないよ。
どんなに孤独だって、誰かはあなたのこと大切に思ってくれる人はいるから……それを忘れないで」



綾女はふっと笑って北村さんを見た。



北村さんは綾女を見て、そして俯いて泣いている斎賀くんを見た。



「……じゃないの………
ほんっと………馬鹿じゃないの……っ」



北村さんが体を震わせて一筋の涙を流した。
泣いてる斎賀くんを見て、一緒になって涙を流してる。



それを見て綾女もちょっと涙目になってる。



良かった。
これでちょっとは北村さんも生きてて良かったって思ってくれたかな?



それから綾女はふぅと一息吐くと、歩き出す。



「……ちょっと頭冷やしてくる」



綾女は病室から出て行った。



尾口先輩は心配そうに見ていた。


< 466 / 554 >

この作品をシェア

pagetop