だんご虫ヒーロー。



北村さんは驚いて夕里の人差し指を見てから、顔を上げて夕里を見た。



「…俺は紗奈に謝ってもらうために、ここに来たんじゃないよ?
紗奈から聞きたい言葉はそれじゃない」



きっと夕里はニコッと笑ってるんだろうな。



本当にチャラいんだから。



でも北村さんが笑顔になったから、今回は良しとするか。



北村さんの目から流れる涙はいつの間にか止まっていて、北村さんは頬を赤くして笑っていた。



「……好き…だった。
ずっと夕里のことが好きだったよ……!」



目にまだ涙が残ってるけど、北村さんの笑顔はすごく綺麗で太陽のように明るかった。



北村さんは夕里のことを『好き』じゃなくて、『好きだった』と過去形を使った。



夕里への気持ちにケジメをつけようとしてるんだ。



夕里に想いを伝えてケジメをつけて、前に進もうとしてる。



ふっと夕里が笑った。



「…紗奈、ありがとう。
俺のことを好きになってくれて。

紗奈はいつも明るくて話してるだけで、俺に元気をくれた。
俺にとって紗奈は大切な友達なんだ。

だからこれっきりだなんて言わないで、これからも俺の大切な友達でいてください」



夕里は北村さんに手を差し出した。



しばらく夕里の手を見つめる北村さんだったけど、やがて夕里の手を取った。


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