だんご虫ヒーロー。
「もちろん!夕里に言われなくたってそうするつもりだったんだからね?」
北村さんのこの時の笑顔は、私が初めて北村さんに出会った時に見せてくれた笑顔まんまだった。
これで北村さんは前に進めるかな?
ちゃんと周りを見て、自分を大切に思ってくれてる人を大切にしてくれるといいな。
私の脳裏に思い浮かぶのは、1人の無口で誰よりも北村さんを大切に思ってる野球少年。
きっと北村さんが変わったら、彼はびっくりするだろうな。
「…李ちゃん」
考え事をしていると、ふいに北村さんの声が聞こえて我に返る。
北村さんは数歩私に近付いてきた。
夕里は自然と道を開けてくれた。
「…今までのこと、謝っても謝りきれないくらい李ちゃんを傷つけた。
簡単に許してもらおうだなんて思ってない。
少しずつ償わせてください」
深々と私に頭を下げる、北村さん。
少しずつ私に償う?
ううん。
そんな償い、私は要らない。
たった一つで十分。