だんご虫ヒーロー。
「高校卒業してもこのままバイトして、お金稼いで、航さんと結婚するの!
それで私は専業主婦になる!」
綾女は進路希望調査にこれを書いて、放送で呼び出しをくらった。
尾口先輩と付き合い出してから、綾女はノロけてばっか。
尾口先輩とデートする前日はものすごくテンションが高い。
毎日ノロけ話を聞く、私の身にもなって欲しい。
綾女の話を聞くと、早苗はチッと舌打ちをして残りのカルピスを飲み干した。
「…あー、あの尾口航平ね。
あやちん、幸せになるんだよ!」
早苗の声が明らかに違った。
尾口先輩の名前を言う時は低くて、綾女に話しかける時はいつもの高い声をしてた。
しかも人の名前の語尾に「〜ちん」ってつけるのに、尾口先輩はフルネーム。
「…早苗、珍しいね。
尾口先輩のことだけはフルネームで呼ぶなんて」
ミルクティーを飲みながら早苗を見る。
早苗は椅子の背もたれに背中を預けて、またスマホをいじり出した。